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猿の惑星:創世記(ジェネシス)のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.7
 アメリカ・サンフランシスコ、鬱蒼と木々が生い茂る森の中を猿の群れがゆっくりと走る。だが彼らは何かしらの気配を感じ、立ち止まる。次の瞬間、獲物を狙うハンターたちの襲撃に遭い、群れの一頭が捕獲される。サンフランシスコの巨大製薬会社ジェネシスの研究所内、若き神経学者ウィル・ロッドマン(ジェームズ・フランコ)が投与した実験中の新薬「ALZ-112」により、一匹のチンパンジーが驚くべき効果を上げていた。上司で所長のスティーヴン・ジェイコブス(デヴィッド・オイェロウォ)に報告し、直ちに臨床実験成功の報告会を開いたウィルだったが、突如投薬されたチンパンジーが暴れ出し、会議室を急襲。その場で即刻、警備員に射殺されてしまう。厳格な所長ジェイコブスからプロジェクトの中止を言い渡されたウィルだったが、死んだチンパンジーは驚くことに小さな子宝を残していた。飼い手が見つかるまでの期間、秘密で自宅に預かることに決めたウィルは、アルツハイマーの父親チャールズ(ジョン・リスゴー)との2人暮らしの家の離れに猿用の居住スペースを設け、その猿を「シーザー」と名付けた。それから5年後、動物園の獣医師キャロライン・アランハ(フリーダ・ピント)と恋仲になったウィルは幸せな日々を送っていたが、「シーザー」には徐々に自我が目覚めていた。

 『PLANET OF THE APES/猿の惑星』以来10年ぶりとなる『猿の惑星』リブート・シリーズ第一弾。なぜ人類の文明は滅び、猿が支配者となったのかを明らかにする新シリーズは68年のオリジナル『猿の惑星』を踏襲した人間 vs 猿の下克上の物語に他ならない。アルツハイマー治療の新薬の臨床実験に狂信的に熱を入れる主人公の姿は、実の父親チャールズの病状とも重なる。音楽教師だった父親は日に日にピアノのメロディを忘れ、自暴自棄に陥っていた。一方で「シーザー」の母親のチンパンジーは、新薬の影響が息子にも及ぶのを嫌い、行動に出る。この「ALZ-112」を巡る人間と猿のアプローチの違いが分岐点となり、物語に厚みをもたらしている。21世紀の医療テクノロジーの進化により盛んに進められる遺伝子組み換えやアルツハイマー治療などの遺伝子工学の危険性は数年前から論じられる問題であり、老人介護や隣人とのコミュニケーションの摩擦など現代的な問題が事件を引き起こす。副作用として起きるウィルス感染の危険性は『バイオハザード』シリーズや『28日後・・・』、『アイ・アム・レジェンド』など近年の作品とも無縁ではない。ジョン・ランドン(ブライアン・コックス)と息子のドッジ(トム・フェルトン)の描写などややステレオタイプな側面もあるが、「ALZ-112」により極端に知能を発達させた「シーザー」が旧来の猿の群れを束ねる様子はやはり強烈なインパクトを誇る。クライマックスのゴールデンゲート・ブリッジでの人vs猿の攻防、育ての親であるウィルとの別離を経て、猿たちは再び野に放たれた。
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