あさのひかり

最後の決闘裁判のあさのひかりのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.4
第3章まであること、第3章が特に現代的、フェミニズム的な意味があることなどをここで読んで知った上で観賞。事前情報あり過ぎかも、とは思ったけど、それでも全然どうなるんだろうとハラハラしながら楽しめたし、何より上映終了までに映画館に間に合って良かった。

第1章的な視点で、うちの親なんかの好きそうな水戸黄門的なベタベタな素朴な善人と悪い裏切り者による分かりやすい時代劇も作れそうだし、第2章的な視点で、それこそ最近観たモテキのリリー・フランキーの役の人みたいな作り手による「分かってるオレ達」のためのヒーロー映画も作れそう。でも、そんな話では全然なくて、第3章の良さがこの映画の良さ。

第3章で、マルグリットが夫の留守中に生き生きと女主人として館を守るため働く場面がこの映画でいちばん好き。あそこが本来の彼女なんだろう、って思う。でも、どちらの男達もそんな彼女の良さを分かってなくて、勝手な彼らの理想の女を押し付けて、故にこんなことになっちゃったんですね。彼女への失礼極まりない尋問や当時のトンデモな医学もかなり胸糞。この辺りは当時故かもだとしても、男達中心の社会の中で、勝手に望んでもない女としての理想の姿を押し付けられてあーだこーだ言われることや、それに適応しているだけでマウント取ってくる周りの女達、ってのは今でも変わってなくて。ここしっかり描いていることが現代的と言われる所以だし、だから私にとっても、これは自分のための映画だったりする。

苦しい制約の中でひとり戦って、思い通りに行かないことだらけでも、自分の意思を訴えて大切なものを守ろうとする彼女の姿は素敵だし、同性としても勇気づけられるしで本当に良い映画。
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