ムック829

最後の決闘裁判のムック829のレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
3.8
騎士の妻が夫の友人にレイプされたが、目撃者はいない。許せない夫は決闘裁判を申し出る。

見応えが凄かった!中世の映像の作り込みも素晴らしいし、真実の行方、決闘裁判の結末にもドキドキしました。
そしてとにかく男達の振る舞いが自分勝手すぎて、妻に同情せざるを得なかったですね。

で、よく羅生門と言われる本作ですが、羅生門の方は明らかに三者三様に嘘をついているのに対し、
こちらは主観による主張の違い、という描かれ方になっていてちょっと違うのかなと。
出来事自体が大きく違った描かれ方をしている羅生門の方が、より分かりやすい感じですね。
まあこちらはこちらでニュアンスの微差が面白いんですけどね。

夫目線のパートでは、夫は勇猛果敢で妻にも優しい男として描かれるのに対し、
妻目線のパートでは、すぐに激情する猪突猛進で粗暴な男にしか見えなかったり。
そして中世では現代以上に女性の立場が弱いということも分かると同時に、
声を上げる女性に対しては女性もが嫌悪感を抱く、というのがなんとも異常に見えましたね。

レイプした男に対して聖職者特権を行使して罪を逃れよ、という神父の助言には口あんぐり。
ふざけるなと、聖職者ってなんなの?と。そんな価値観がまかり通っていたのが恐ろしい。

決闘シーンの緊張感は素晴らしく、最悪の結末にならないようにと歯を食いしばりながら見ていましたね。
決闘が終わった後のマルグリットの表情がなんとも言えず…彼女の複雑な胸中が伝わってきました。
なんにせよ、2時間半という時間を全く感じさせない没入感は素晴らしかったです。
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