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最後の決闘裁判のmaiのネタバレレビュー・内容・結末

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

三視点からひとつのできごとを描く羅生門スタイル。
視点の違いでこうも異なるものかという面白さに加え、それまでの出来事を三視点から厚めに描くことで「最後の決闘裁判」のシーンが手に汗握るエモーショナルなものになるという構成の上手さ。
また中世の女性の立場を描くことにより、現代までに女性が歩んできた道筋に思いを馳せることが出来る現代らしいテーマ設定がすごく良くて唸ってしまった。


マッドデイモンの無骨さ、ベンアフレックの軽薄さ、アダムドライバーのナルシシズムは良くも悪くも女性が感じる男性性のイメージでもある。特にナルシズムの部分は「あの女俺に気があるな。イケる!」という思考であり、加えて男性が行動に移してしまう恐怖体験はセクハラを受けた女性全員が感じているものでもあるだろう。

多様な価値観が受け入れられつつある現代人の私から見ればマルグリットの扱いは同性として信じられないし耐えられないものがあった。
構造主義を唱えた人類学者のレヴィ=ストロースがインセストタブーが遺伝子の悪影響のため回避されたのではなく、結婚は女性の交換(土地や家畜と同じ)のためというのを思い出した。
結果マルグリットは構造の中からはみ出し、そういった勇気こそが結果として社会や文化を変え、人間を自由にしていくのだ。

中世から比べて現代にはまだまた変わらぬものもある。人間である限り愚かさからは逃れられないかもしれないが、考えたり未来を思い行動することだけが唯一の希望だと最後の子供のシーンを観て思った。
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