あばばば

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のあばばばのレビュー・感想・評価

4.5
クレしんの中でもこの映画は何度も見ている大好きな作品。子どもの頃以来に観た「懐かしい」に加えて、セル画が「懐かしい」の時代に突入し、また「懐かしい」のグレードが上がりましたね……(ヒロシの靴を嗅ぐ絵文字)

わたしは昭和を生きてはいないけど、大人になって観てまた感じ方が変わったから、子どものときに出会えてとても幸運だった。そしてケンの服装がおしゃれにみえるから確実にトレンドは一周してるんだと思う。

今観ると、ケンはリーダーであるけど、しんちゃんたちを家に呼んで今からなにをするか説明したり、町中に鬼ごっこの様子を流したりと矛盾していることをたくさんしていることがわかる。過去に戻りたいと強く思っているのはどちらかというとチャコの方で、ふたりのバックグラウンドは明かされてないからわからないけど、ケンはチャコの願いを叶えてあげたかったんじゃないかな。死ぬことさえも。踏み出したのはチャコのほうが先だったし。

そこで飛び込んでくるしんちゃんの「ずるいぞ!」が本当にみぞおちを殴られたぐらい重くて強くて息できなくなる……しんちゃんにその気はなくても、演出上は明らかに意味を含んだこのタイミングの「ずるいぞ!」は殺傷能力高すぎて、オーバーキル気味ですらある……

自死を選ぶのは「ずるい」。でもこれって普通、死んでしまったあとに言う台詞なような気がしなくもない。死んでは遅いから先に言ったのかな。『「自殺」を「家族」に「邪魔される」』という、チャコとケンにとっての「不都合」なことが、ふたりの未来を繋いだ、という結果はふたりにとっては皮肉なことかもしれないけど、倫理的に是で作品の中でも繰り返し強調されてきたこと。つまりマイナスがプラスに逆転したと言える。「ずるい」という台詞は、あまりに言葉が強くて、ストレートすぎて、やるせなくて、「マイナス」的なニュアンスさえ寄せ付けてしまうけれど、あのとき確かに「プラス」に働く磁場があったような気がする。「同棲時代」であったチャコとケンは、あのあと未来の形そのものである「家族」になるのかな。

しんちゃんが東京タワーを登るときの疾走感とカメラの動きが最高。あとマサオくんの豹変具合がツボでそこが観たくて何度も再生してしまう。
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