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スープとイデオロギーのkのレビュー・感想・評価

スープとイデオロギー(2021年製作の映画)
5.0
もうこのヴィジュアルのオモニの笑顔見るだけでも胸が張り裂けそうになる。

どこまでも個人的なドキュメンタリーでありながら、まさに「イデオロギー」が詰まった映画。
韓国史上最大のタブーとされてきた済州4・3事件。済州島で"南"による無差別な大量虐殺が行われ、監督のオモニはその渦中にいながら日本へ逃げて生き延びた。
一度壊れた人生を自力で建て直し、50年以上その過去を抱えてきた。
日本にそんな境遇の人がいると知ること。差別の対象にされてしまうことが、どうしても許せない。
韓国と北朝鮮の関係性の中に日本の存在があること。それを年齢関係なく知っておかないといけない。

個人的に一番好きなシーンについて。
オモニの元に葬儀屋から"葬儀の見学"の招待状が何通も届いてて、それを見たアライさんがブチ切れてその葬儀屋にガチクレーム電話をするシーン。
なんて言ってたか忘れてしまったけど、大切な人の人生を大切に思うがゆえの怒り、勝手ながらめちゃくちゃ心が救われた。

スクリーン越しに見ても言葉を失う犠牲者のお墓の数。その景色。
監督が真実を知り、オモニを責められないと泣いていた姿が本当に辛くて、背中をさすりながら一緒に泣きたい気持ちだった。
人生を映像で社会に刻む姿勢がめちゃくちゃかっこよかったんだけど、それ以上に悲しさが圧倒的に押し寄せる。

とんでもないドキュメンタリー。

考え方が違っても、分かり合えないことがあっても、同じ食卓でご飯を食べる。
家族にとって一番大切なことって、食事やなって改めて思った。
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