冒頭お母さんが何を言っているのかわからなくて(日本語であることだけわかる)、これがこのまま続くのかと一瞬不安になったが、杞憂です。配信で観る人は停止しないで観てください。
お母さんが済州島四・三事件で何を経験したかを知って、ヨンヒさんがようやく理解できたことを語るシーンがこのドキュメンタリーのクライマックスだと思うのだけど、そこは自分にとっても長年の疑問が解けたシーンであり、胸が詰まった。なにごともそこに至る背景がある。あんなことがあって、朝鮮総連の活動家になる。そりゃそうなる人もいるだろうと思う。
お母さんは娘にさえ伝えられない重たい記憶を何十年も心に沈めてきて、語った直後に認知症が進行してしまう。存在のバランスを壊してしまうほど思い出したくない経験だったということか。そんなふうに心の底に石を抱えて生きている人たちが、世界中にいる。
副読本
・文京洙『済州島四・三事件: 「島のくに」の死と再生の物語』
・ハン・ガン『別れを告げない』