こなつ

愛なのにのこなつのレビュー・感想・評価

愛なのに(2021年製作の映画)
3.6
「街の上で」と「窓辺にて」の今泉力哉監督のリアルな恋愛模様を色々な角度から描いている演出が面白くて、この作品を鑑賞。

監督は、城定秀夫さん。
あれ?今泉力哉さんは脚本だけ?監督じゃないんだ。

と思ったら、これは城定秀夫さんと今泉力哉さんのコラボ企画だった。
「愛なのに」
脚本今泉力哉、監督城定秀夫
「猫が逃げた」
脚本城定秀夫、監督今泉力哉

それぞれがオリジナル脚本を提供し、お互いが監督をするという試み。

この作品は、今泉力哉さんらしい、色々な形の一方通行の恋愛が変に絡まりまくるお話。

一途な高校生の片思い、欲情に薄く寂しげな30男、結婚式を控えて苛立つ女性、結婚するのに平然と浮気する男など、結構癖のある登場人物達。

R15ということで、男女の絡みも濃厚だと思ったら、城定秀夫さんは、Vシネマでは有名な監督さんなんだとか。

舞台になっている古本屋は、三鷹にある「上々堂」(しゃんしゃんどう)、セットでなく実際の古本屋での撮影だからか、色合いも間取りも、店の外の様子も非常に自然な感じがした。

物語は、古本屋の店主多田(瀬戸康史)が、かつてのアルバイト仲間だった一花(さとうほなみ)を忘れられずにいた。一方、古本屋の客の高校生岬(河合優実)には、しつっこく告白され、求婚され続けている。一花は婚約者亮介(中島歩)が浮気していることも知らず結婚式準備に追われ、ちっとも協力的でない亮介に苛立つ。ある日、亮介の浮気がバレて、、、思わぬ展開になって行く。

仕事にも恋にも欲があまりなさそうで、不器用だけど優しい30男を瀬戸康史が好演。元々彼の演技は好きだが、高校生に詰め寄られておたおたする姿など真に迫っていて面白い。

その高校生役の河合優実ちゃんの演技もまた良かった。若いのにちょっと色気があって魅力のある女優さんだと思った。

一花の婚約者亮介、中島歩が、本当にクズで情けなくて哀れな男を演じている。中島歩さんてどこかでもこんな役を観たような、とにかく演技とは思えないリアルな表情が面白い。

「群を抜いて〇〇」なんて言われてしまってお気の毒。

途中どこへ進むのだろうと思っていたら、やはり今泉力哉風の愛の形が見えてきた。高校生岬がただ望んでいた、一緒にご飯食べて、話をして、何となく過ごす、、、そういう普通の時間を共有出来ることが、愛することに繋がるのだろう。
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