パイルD3

アステロイド・シティのパイルD3のレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.5
年末なので今年観て気になった作品をいくつか拾っていますが、コレは大好きなウェス・アンダーソンムービー。

9月の公開初日に泳ぐように観に行ったのですが、軽佻浮薄というのか、ユルい破天荒というのか、シニカルなトーンはいつも通りの奇妙なアンダーソンワールド。

原爆実験にはびっくりするが、そんな1950年代の時代を象徴するアイコンやビジュアルが“小惑星の街“を気持ち良くカラーリングしていて、唯一無二の独特な別世界観がたまらなくうれしい。
これだったら、狂言回しのようなセリフ多めの舞台演劇のモノクロパートも、全部奇妙な街の風景の中に放り込んだ方が良かった気がする。
あえて切り離したせいで、かえって流れが分断されるのが最後まで引っかかった。

三幕もののお芝居仕立てで、劇中劇のようなスタイルにした監督の意図するところはあるのだろうが、ベタなギャグもマシマシ気味になっていて、分ける必要を感じなかったなぁ…。

ブライアン・クランストン扮する司会者も街に現れていたし、どうせ変な街なのだからシアターがあっても違和感は無かったと思う。

5人の天才少年少女が車座になって、偉人や有名人の名前を暗記して伝言する変なゲームをやっていて、映画人の名前がズラッと出てくる。オーソン・ウエルズやグレタ・ガルボに混じって、ウォルター・ピジョンの名前が出てきたのには驚いたが、全部監督の好きな人たちに違いない。

毎度多彩なキャストの中では、ジェフ・ゴールドプラムが意外過ぎる役で出ているが、知らなければ絶対にわからない。気づかないんじゃなくて、わからないです。わかりようが無いというのが正しいです。
でもわかると何だか笑えます。

やっぱり変な監督だ。この変さ加減が「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」で初見して以来、ずっと病みつきになってしまっているが、ここでもまた再認識。
パイルD3

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