いずみたつや

アステロイド・シティのいずみたつやのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.8
ウェス・アンダーソン作品はあまりにも独自性が高いために、「何かの影響を受けている」という当たり前のことをつい意識の外に置いて観てしまいます。

しかし、本作はフィクションと現実が互いに影響し合うことが大きなテーマのひとつ。考えてみればウェス・アンダーソンはあらゆる角度からの影響を隠さない人物だし、シンメトリーの構図や自分の好きなモノをこだわり抜いて配置するスタイルの端々に影響が炸裂していることに改めて気づかされます。

彼の俯瞰したような視点や作り込んだ画面が、本作では劇中劇スタイルと不思議な化学反応を見せており、現実と虚構をのらりくらりと行ったり来たりする夢ともおとぎ話とも言えない蜃気楼のような儚さにエモーショナルな感覚を刺激されてしまう瞬間がありました。

極限までフィクショナルな画面と演技のなかでも生き生きとしたキャラクターが描かれていることも彼の作品の不思議な魅力ですが、そこにはやはり実力派の演者たちの貢献があるのだなあと、難しい演技を求められた本作で改めて感じさせられました。