ヘロヘロ

東京画 2K レストア版のヘロヘロのレビュー・感想・評価

東京画 2K レストア版(1985年製作の映画)
4.5
80年台初頭の東京風俗史としても貴重なフィルム。そこに映し出されたバブル直前の東京は、懐かしくも、まるで夢中を彷徨っているかのようで現実感がない。
東京物語から30年後の東京の電車の中でヴェンダースが語る真摯な言葉は、小津安二郎のユニークな価値=芸術性を的確に言葉にしていると思う。小津安二郎のフィルムに触れないといけない、そうしなければいけないと、強い刺激をもらった。小津安二郎はどの時代においても観るものに常に新しい価値をもたらす映画を撮っていたのだからと改めて気付かされた。
部外者からの視線によって描かれる東京の風景、日本人には見知った当たり前の風景が描かれているのを眺めていると、不意にフィルムに立ち現れる日本の風物を超えた何かを僕は感じて、面食らった。それは、言語の差異を超えた映画の持つ可能性という今や言葉にするのも憚られる忘れられた神話を信じたくなるような瞬間だった。このドイツ人監督は、日常を通して日常ならざるものを小津安二郎の映画の中に発見し、東京を舞台に実験的に「それ」を再現する試みをしているかのようだ。

厚田雄春のインタビューはとても貴重且つ感動的で、こんな良い仕事をドイツの映画青年にさせてしまった事を悔やむと同時に感謝したい。

笠智衆
ヘルツォーク
クリスマルケル

『666号室』同様、ヴェンダースのドキュメンタリーは劇伴が不穏な雰囲気を醸し出す。何を狙ってんのかなぁと。音楽の趣味は良くないような気がする。