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硫黄島からの手紙のKUBOのレビュー・感想・評価

硫黄島からの手紙(2006年製作の映画)
4.5
「Letters from Iwoto」。今の高校の英語の教科書に、タイトルそのままのレッスンがある。もちろん二宮和也、渡辺謙がクリント・イーストウッド監督作品に出演したことで話題になった、あの「Letters from Iwo-jima」と同じトピックだ。

「島全体に地下壕のネットワークを作る」なんて英語で書かれていても、具体的に想像できないところを、映画は圧倒的な説得力で見るものをも地下壕に隠れる閉塞感に苛む。

危急存亡の硫黄島に派遣された栗林中将(渡辺謙)。すでに太平洋艦隊は壊滅し、部隊は島に孤立。増援も救援もなく、ただひたすら本土攻撃を1日でも遅らせるためだけに礎となれと命じられての決死の作戦だ。

元はパン屋で、妻と生まれたばかりの子を残し「必ず生きて帰る」と約束してきた一兵卒(二宮和也)。ここでのフラットで自然体なニノの演技が素晴らしい。特に軍国主義を背負って立つような中村獅童らとの対比が、見るものをニノの目線に立たせ、感情移入させる。

「捕虜になってはならない」という当時の命令により、自死を選び、手榴弾を腹に抱えて爆死する部隊の悲惨なこと。最後の突撃を行う栗林中将らの壮絶なこと。

教科書だけでは伝わらない、壮絶な過去の事実を映画は残酷にも突きつけてくる。そして彼らが書き残した最後の手紙の重さが見るものの心にリアルに迫ってくる。

クリント・イーストウッドは、普通なら「父親たちの星条旗」だけでも良さそうなものを、よくもこの「硫黄島からの手紙」までも制作してくれた。それは、戦争には絶対的な正義はなく、自分の立つ側によってその見方は全く異なる、というメッセージを伝えるためだろう。

俳優二宮和也の原点であり、日本人が忘れてはならない悲劇であり、クリント・イーストウッド監督の傑作。日本人は見るべき映画です。
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