Eyesworth

ベルリン・天使の詩 4K レストア版のEyesworthのレビュー・感想・評価

4.8
【傷一つない天使の決断】

ヴィム・ヴェンダース監督の1987年の代表作4Kレストア版

〈あらすじ〉
ベルリンは天使の住む街。天使は人の心の声を聞けるが、色彩を感じる事は出来ない。そして人々を見守る天使の姿は子供にしか見えない。天使ダミエルとカシエルは人々を観察して日々を過ごしている。図書館、地下鉄、そしてモニュメントの上で。ある日、サーカスでフランス人の空中ブランコ乗りのマリオンと出会い、彼女の孤独な心の声を聞いたダミエルは彼女に恋をしてしまう。しかし、天使が人間に恋をすることは許されていなかった…。

〈所感〉
これはアイデア勝ちの素晴らしい作品。
ヴェンダースはベルリンかパリ、テキサスか。ベルリンの壁崩壊以前の時代背景で、人間の住む色の世界と天使が住むモノクロの世界の交差が美しい。天使は人間の考えが読み取ることができる。人間は大抵クソみたいなことしか考えていないので幸せとは掛け離れているように見えるが、天使達はそんな世界を羨み地上に降りるようだ。クソみたいな世界で生きる、不完全な我々だからこそ愛おしいなのだろう。我々が生み出すどうしようもない思弁の数々は天使達が聞き取って詩にしてくれる。結局、人間は他者がいて初めて存在できるのだ。この作品を理解できたとは到底言えないが、言葉の力の強度を理解することができた。天使=ただの傍観者のままでいるのか、それとも自分の意思で運命を切り開いていく人間になるのか、決断すること。私達は時に傷に塗れ、時に愛に染まり、やはり願っても天使ではいられない存在なのだ。
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