KoKo

ベルリン・天使の詩 4K レストア版のKoKoのレビュー・感想・評価

3.8
"空の太陽以外にも太陽があるんだカシエル、今日夜が更けると春が始まる。僕の知らない翼が生えて、大いに驚かされるんだ"
いかにもだけど良いセリフですな。

人間として生きてみたい天使が人間に恋をする。
設定としてはありがち感があるけど、一般的なイメージに反してこの映画の天使は窮屈感がある。
見ている景色はモノクロだし、人を物理的に触れることはできない。コーヒーの味はもちろん温もりを感じることもない。
日がな仲の良い天使と地上で見聞きした人間の"良い瞬間"を語りあって過ごしている。
映画自体も天使ダミエルが人間になるまでは結構退屈で、映像の大半はモノクロだし、天使達が盗み聞く人々の心の中は詩的過ぎて疲れる。
天使の世界って案外こんな感じなのかもなぁと思った。
それでも時折挟まれるカラーが、ダミエルの"人に触れたい"って思った瞬間で、それは人間の感情だよなぁと沁みた。
そして彼が人間性を手にした瞬間世界に血が通い色づき始める。

刑事コロンボ、というかピーター・フォークが本人役として出てくるんだけど、"元天使としてダミエルを人間へと誘う存在"以外の存在意義を十分に理解できなかったのが悔やまれる。

この映画の公開2年後にベルリンの壁が無くなったわけだけど、閉塞感から解き放たれた人々の喧騒を見て天使達は何を思ったんだろう。
きっと人間になりたい天使は増えたと思う。
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