大島育宙

イノセンツの大島育宙のレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.1
大友克洋『童夢』にド直球影響を受けたことは言われなくてもわかるくらい色濃い影響なのだが、受ける印象は全く違う。

子供の無邪気さ=邪悪さ、というホラーのモチーフ自体は伝統的だが、ズバ抜けて繊細なところがとても怖い。

孤独と貧しさを持て余す子供達の目醒めは、
思春期に差し掛かっていない分なのか、
潤いが少ない渇いた暴力性を帯びる。
その点が『キャリー』や『クロニクル』よりも
直接的に痛い。子供の頃の擦りむきってなんか
治りが遅かったな、という痛みに似ているかも。
物の動きの怖さ描写は
『パラノーマル・アクティビティ』以降感。

【【猫好きは閲覧注意、というか禁止】】だが、
これもまた愛着の対象としての猫へのそれなので
ただの暴力ポルノではない。だから怖い。

それでも、子供たちは可愛く描かれる。
4人の子供達を嫌いにはなれない。
コップにコーラを表面張力ギリギリまで注いで、
口を窄めて吸い込む男の子を見て胸が詰まった。
全世界の子供共通のあるあるだろう。
いつからだろう、
コップに8分目に注ぐことを覚えてしまったのは。

テレパシーのテストをする階段のシーンに、
超能力の説明と子供の好奇心のとめどなさが
詰まっている。大好きなシーンだ。
紛れもなくホラー映画なのに、
文字を尽くすと
スタンドバイミーの感想みたいになる。
不思議な映画だ。好きだ。