つかれぐま

イノセンツのつかれぐまのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.1
23/8/9@アップリンク❶

1km平方にも満たない団地🏢敷地からカメラは出ない。CGもほとんどなし。それでもこんなに息詰まる作品になる、恐るべし北欧ホラー。

日本のドラマがやれば30分で終わりそうな内容を、2時間かけてじっくり、ねっとり。そのお陰で説明台詞がない映画的快楽の時間が。映画館で観るホラーはこうじゃなくちゃね。「テンポの良さ」がなにより大事な倍速視聴民には、この良さが解らないだろうな。

多くの血が流れる凄惨な話が、結局は一人の少女の「ひと夏の成長」物語に収束する。このストーリーテリングの軽重逆転が面白い。

子供は残酷なもの。
本作の起点は「性悪説」かもしれない。だが邪悪を排除する自浄作用も人間の本能にはあるのだというクライマックス。「自分と違う人」に寛容たれと「多様性」原理主義者は叫ぶが、本作のような「自浄作用」までが封じられるべきではない。わずか4人の子供たちを見ながら、そんな深みにまで思いを巡らせる素晴らしい脚本と演技。特に後天性自閉症のアナが、恍惚と覚醒を行ったり来たりする演技(と思えない程の)には鳥肌。

静寂と音のコントロールが上品だった。