面白かった。
「大友克洋の『童夢(どうむ)』に影響受けた作品」と聞き、
これは見なければ!と思った作品。
(実際に監督が公言している)
大友克洋と言えば、『AKIRA』が有名なんだけど、
実質、漫画で「革新的」と語られたのは『AKIRA』より『童夢』の方で、
例えば、超能力で物を壁に沈めたりする表現はこれが初だったと言われているし、
見開きで人より建物に焦点を当てたのも、オノマトペを吹き出しに入れたのも、
この作品が最初だったと言われている。
この作品を抜きにして漫画史を語るのは難しいと言ってもいい。
だからこそ、世界中に影響を与える作品となった。
そういうわけで、本作は『童夢』に似ている部分が多々ある。
公団の中で無邪気に遊ぶ子供たちを描いた作品なんだが、
その中で超能力を発現させる子供が現れる。
主人公はイーダという少女で、団地で遊んでいるベンと仲良くなるが、
ベンは、幼少期特有の残虐性を持っており、
面白がって猫を階段から落とした上、頭を踏み潰したりしている。
イーダは姉に自閉症のアナがいる。
アナは仲良くなったアイシャとテレパシーで繋がっており、
どんどんと力を増していくベンに、警戒心を抱き始める。
ベンはついに、人を操る能力を手にし、殺人を犯すが、
それをアイシャとアナに咎められ、逆上。
ついにはアイシャの母を操り、アイシャを殺してしまう。
『イノセンツ(無邪気)』というタイトルが秀逸で、
子供は、ある時期に小動物を殺しまくったり、凄惨ないじめに加担したりと、
「無邪気ゆえの残酷な一面」があるわけだが、それをよく表現できている。
最後、悪鬼と化したベンを止めた方法が衝撃で、
ひょっとしたらこの土地には力を開花させる何らかの作用があるのかもしれないと思った。
ここまで褒めたので、少しだけ物足りないところを言うと、
面白いんだが、今一つ『スタンドバイミー』のような少年期の大作にはなり切れない部分がある。
上映が117分もあるのに、それぞれの子供たちの内情を深く描けていない感じがあるし、
何かが猛烈に美しかったり、かっこいいビジュアルがあったわけでもない。
メインキャラクターが受けた心の傷も、強く共感できるほどではなかった。
『童夢』を再現するというセンスはいいんだが、そこに今リバイバルさせる社会的な意味みたいなものがあれば尚良かったし、
ここまで『童夢』をなぞるなら、バージョンアップした部分を提示するべきなんじゃないか?(同じ感動なら『童夢』がすであるからいいです)と思ってしまった。