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ある男のamuのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

演技力がずば抜けていて最近すっかりファンになってしまった河合優実さんの出演作品をたどり中。今作での演技もとても良かった。

また安藤サクラさん、仲野太賀さんをはじめ多くの巧みな役者さんが名を連ねており、窪田正孝さんの素晴らしく安定した演技にも見入る。加えてオーディションにより安藤サクラさんの息子役に抜擢された坂元愛登さんの演技も光っていた。

雰囲気も展開も内容も「愚行録」に酷似した作品だなと思ったけれど、原作者はどうやら違うらしい。この手のテーマを監督が好んでいるのかな。

終始不穏な映像は今作も撮影をピオトル・ニエミイスキ監督が担当されており、この部分を含めて石川作品といった具合だった。(「蜜蜂と遠雷」はスタイリッシュかつデザイン性があったがそこは特に無くて主にやはり「愚行録」の雰囲気。)

人は人を、家や血や国で身勝手に判断したり差別をしたりする。マウントを取ろうとする者、他者を見下す者。または己の境遇をコンプレックスに感じこの世界から消えたいと考える者。名前を変えて(違う名前を名乗って)しがらみの無い別の人生を歩みたいという思いに胸がぎゅっとなった。

本筋の謎を探っていく展開の途中、何度もあからさまな差別が妻夫木聡さん演じる弁護士に対し向けられる。本筋から逸れた話のようでいてその言葉の暴力はジャブとなってラストへの伏線となるわけだけど、とにかく言いたいのは柄本明さん、むかつくじいさんを演らせたら右に出る者はいないなということ。ほんと嫌な気持ちにさせられる。

清野菜名さんも、でんでんさんも、カトウシンスケさんも皆さん安心して観ていられる演技で素晴らしかった。

最後に。
台詞も無いし出演時間は秒であるにも関わらず表情の演技だけで見ていて目頭を熱くさせられる仲野太賀さんの演技がさすがで、個人的には「すばらしき世界」以上に最高でした。


内容は好みでは無いけれど、ひとつの映画作品として素晴らしかったと思うので高めの点数つけときます。
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