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ある男のべるのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

原作未読。

展開が重い。全部が重い。
子どもにも容赦ない(家族ぐるみの付き合いがある友達誘いに来たら、そこで自分の父親が友達一家殺してて血塗れのお金くれるなんていうシチュエーション、どうやって思いつくんだろう。自分の名字について考えなければいけなくなる度合いも超えている)。
感情移入して見るのが難しい。

重要な登場人物は須らく社会的スティグマを抱えていると設定されている。端役の、例えばザ・昭和の日本人を象徴したような差別感を持つ城戸の義父母(モロ師岡と池上季実子)とかは、逆にバイアスをかける側に置かれている。
この辺り、荒唐無稽(でもないのか?僕の想像力が衰えてるのか)な展開をリアリティで支えているのは役者陣の演技力だ。唸る。
中でも柄本明のキャラクターは最高だった。

僕はこういう重い話は途中で投げ出しがちなのだけど、なんてことのない科白、例えば

「どのくらいかかりますか?」
「経費として建て替えておきますから…」
「あ、時間です」
「あ、時間…」

「これうちの名物料理、食べてみて」
「大阪ではまだ入れ替わってなかったと」
「どうですか?」
「いやまだ何とも…」
「美味いっしょ?」

みたいなやり取りがとても柔らかく聞こえて、それにも惹き込まれたまま没入してしまった。

色々不明な点もあるのだけど、原作を読んだら端折っているところに大事な場面もあったようで、温泉旅館の次男とか良い役者配置しているんだから10分延ばしてエピソード追加すればいいのにと思った反面、ラストシーンが全部科白で説明しちゃってるのが惜しかった。
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