岩嵜修平

さがすの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
4.0
これまた弩級の日本映画が…。指名手配犯を見つけたという父が失踪し、娘が父を探す話かと思いきや、二転三転する予想できない展開。過程には、貧困、孤独、介護、警察など日本社会が生み出した様々な問題が横たわる。何度か終わっても良いシーンがありながら、最後まで描き切ったのが凄い。

『岬の兄弟』で手腕を世界に見せつけた片山慎三監督が、傑作ドラマ『さまよう刃』での残虐描写への挑戦を経て、オリジナル脚本で複雑な人物像を見事に描写。佐藤二郎は今までで1番の演技であり、多面性を見事に示した清水尋也の怪演も凄かったが、台詞の少ない役しか無かった伊東蒼に最も驚かされた。

難病の描写や、それが故のある判断、殺人犯の背景描写など、非常に扱いが難しい設定はありつつも、そこを描いたからこそ考えさせる面があり、他人事として忘れられない気持ちを残す。李相日や瀬々敬久の近作より更に泥臭く、優れた韓国映画に近い、生々しさを感じる演出の数々。世界で活躍して欲しい。

片山慎三監督は、多くの人が目を背けるけど、間違いなく、この世界の片隅に居たり起きたりしている人や事象を、ちゃんと取材して真正面からフォーカスを当てる辺り、ドキュメンタリー監督に近いと思うけど、それを見事にエンタメとして描けるのが凄いんだよな。結果として観る人(≒知る人)が増える。

今回も、音楽は髙位妃楊子さん。『さまよう刃』では、エンディング曲含め、かなり音楽が強かった感じがしたけど、 #映画さがす では見事に溶け合ってた。あの曲の演奏も髙位さんなのか。
岩嵜修平

岩嵜修平