はる

さがすのはるのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
5.0
今年観た映画の中で今のところ一番食らいました。これは本当に凄い。

前作の『岬の兄妹』はインディペンデント映画ながらかなり話題になり私も大好きな一作なのですが、商業作品デビューとなった本作はそれをさらに上回ってきました。

コメディのイメージの強い佐藤二朗がアドリブゼロ、ヌルいおふざけゼロで挑んだ重厚な演技に加え『空白』で強く印象を残した伊東蒼の究極ともいえる自然体な演技。そして死んだような目が恐ろしい快楽殺人者役の清水尋也。三つ巴になって繰り広げられるミステリーはまさに格別。最後の一瞬まで決して気の抜けない至高の映像体験は筆舌に尽くし難いものがあります。

『岬の兄妹』もそうでしたが、社会的弱者と言われるような貧困や障害、さらに特殊なマイノリティなどの当事者にフォーカスを当てて、綺麗事ではない現実を目の前に叩きつけるような一撃だと思います。

重すぎる題材ながらエンターテイメントとして非常に優れており、メリハリをつけながら常に高い位置で面白さが持続し2時間があっという間に過ぎていきました。前半は失踪した父親を探す娘の視点から描かれ、後半は殺人鬼視点、父親視点からというギミックも観客を惹きつけて離さない重要なポイントになっています。

ラストこのままハッピーエンドで終わるのかなと思わせてからの卓球のラリーのシーン。ここまででも十分に完璧だと思って観ていたのですが、このラストシーンを見た瞬間に本作が私の中で完璧のその先に行ったような気がしました。ファスト映画や倍速視聴では決して得られない映画を観る喜びがこのシーンひとつ取っても詰まっていると思います。

片山慎三監督、間違いなく現在の日本映画のトップランナーだと思います。次回作も首を長くして楽しみに待っています。
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