rage30

さがすのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

さがす(2022年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

失踪した父親を探す、娘の話。

映画の構成としては、娘の父親探しが描かれる前半、名無しの正体が描かれる中盤、父親と名無しの関係が描かれる後半といった感じ。

前半に関しては、娘役の伊東蒼が良かったですね。
ノワール感すら漂う重苦しい雰囲気の中、彼女のコテコテな大阪人キャラが映画を明るくし、見易くしてくれたと思います。

中盤に関しても、やはり俳優が良かったなと。
清水尋也の厭世的で怪しいキャラクターが、サイコな殺人鬼役とマッチしていました。
また、名無しの「世の為に自殺幇助してる」と言いながら、実は自分の欲望を満たす為の殺人でもあって、矛盾を抱えているのも面白い部分。
最終的に父親を信用してしまう辺り、実はめちゃくちゃ人間らしいキャラクターだったのでは?という気もします。

終盤に関しては、自殺志願者のグラサン女(森田望智)が印象的。
自殺志願者とは思えないくらい傲慢で口が悪いんですけど、そのギャップが何とも言えないユーモアを醸していて、どこか憎めない存在でしたね。
勿論、主演の佐藤二朗も、普段とは違うシリアスな芝居で良かったと思います。
役者一本で頑張れば、ソン・ガンホ級の名優になれる可能性を感じましたよ。

社会の底辺の底辺…地獄of地獄を見せてくる辺りは前作『岬の兄妹』とも共通する部分で、片山慎三監督の作家性でもあるのでしょう。
かなりハードコアな内容だった『岬の兄妹』と比べ、本作はミステリー仕立てにしたり、時系列をシャッフルしたりと、エンタメ性が増しているので、前作よりは万人向けの作品になっているかなと思います。(それでもハードですけどねw)

ただ、個人的には前評判が高かった分、「期待値を上げ過ぎたかな…」というのが正直なところ。
安楽死やSNSといったテーマは悪くないんですが、そこまで斬新なテーマというわけでもないし、誰もが安心出来る所に落ち着いちゃったラストもイマイチ。

例えば、「父親が自殺幇助を再開したら、娘が志願してきて殺してしまう」とか、「名無しの正体が実は父親で、殺人も彼が実行してた」とか、それくらいのインパクトがあっても良かったかもしれません。
まぁ、そこまでやると、あまりにも胸糞過ぎて興行成績は期待出来ないかもですが、監督自身が「(1人で脚本を書けたら)もっと難解で残虐になった」と仰っているので、そういうラストもありえたんじゃないかな…。

とにかくまぁ、片山監督の商業映画デビュー作としては上々の滑り出しになった事は確かですし、今後のキャリアにも期待が持てて、映画ファンとしては嬉しい限り。
次作も楽しみにしています。
rage30

rage30