ポチポチ

からかい上手の高木さんのポチポチのネタバレレビュー・内容・結末

からかい上手の高木さん(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

タイトルに偽りありというか、驚いたことにこの映画では高木さんが西片をからかうシーンは中盤以降ほぼ無い。

本作は中学最後の夏休みを舞台に、からかう・からかわれる関係からの脱却と青春の喪失、そこから生まれる変化と成長を描いている。


映画といっても舞台を変えて話を大きくするのではなく、いつも風景をより緻密に描くことでいつもそこあった日常をより尊いものとして見せてくれる。
いつもの駄菓子屋、いつも遊んでいた空き地や神社。あの日あの時の思い出。
だからこそキャラクター各々が抱える未来に対しての不安や青春の喪失感をより引き立たせる。

TVシリーズと比べると全体的にやや暗めな印象を受けるが、陰影を使った画面構成による影響もあるだろう。
夏は日の光が眩しい季節でもあり、影が最も色濃く写る季節でもある。外の世界の明るさに対してキャラクターたちの内面を表すような黒い影がかかる描写は普段のゆるふわ日常ものからは考えられないほど見ている側の心を刺す。


いつもは大人ぶって澄まし顔で西片をからかっている高木さんだが、誰よりも“いつもの日常”の喪失と変化を恐れていた。
前半の蛍と後半の子猫の件は彼女にとって西片との“今”を繋ぎとめるもの、“未来”を保証させてくれるものだったのかもしれない。
好きな人と見られればずっと一緒にいられるという噂の蛍、拾った子猫を一緒に世話をすることで今後も西片と会う口実ができる。“今”を“未来”まで繋げることができる。
しかし、そんないじらしい少女の願いは届かなかった。
蛍は見つけられず、子猫は飼い主を見つけ離れて行ってしまった。
西片とのからかいの日々が、"いつもの日常"が壊れてしまう予感。悲しみと喪失感に苛まれ涙する彼女に西片は言う、

「高木さんは幸せになれる。俺が幸せにする」

その真っ直ぐな言葉に彼女は“いつもの日常”からの脱却を受け入れた。 それは変化であって喪失を意味するものではない。 二人が新たに歩み始める“今”とは違う“未来”への言葉だった。


そして時間は飛び夏祭りの日。
そこには好きな子をからかってしたり顔の女の子と、彼女のからかいに赤面して目も合わせられない男の子はいない。
差し伸べられた手を掴み夜空に打ちあがる花火を一緒に見る、仲睦まじいカップルの姿だ。
1年前は一緒に見られなかった花火。でも、初めて手をつないだあの日からここまできた。

“からかい”で成立する子どもの恋人ごっこではない、大人の関係へと進んだ彼女の最後のセリフ、

「私も西片を幸せにするよ」


からかいのみに終始するのでなく、しっかりと二人の関係にケジメを付けてくれて嬉しかった。
賛否あるのかも知れないけど個人的には評価したい。
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