Yui

ムクドリのYuiのレビュー・感想・評価

ムクドリ(2021年製作の映画)
3.9
幼い娘を亡くしたリリーとジャック。悲劇から1年後、ジャックは精神病院に入院、リリーは仕事をしながら広い家に一人、どうしようもなさを抱えながらジャックを支えていた。家庭菜園を始めたリリーの庭の木に縄張り意識の強いムクドリが巣を作り、リリーとムクドリのバトルが始まる…。

娘を亡くして1年、そんな短い時間ではどうやったって立ち直れるはずがない二人。鬱になり入院しているジャックと、仕事をしながら週1でジャックの面会に行くリリー。辛さや立ち直り方、かかる時間は人それぞれだけど、同じ痛みを抱えた二人なのに、片方は辛さを吐き出せて、片方は蓋をしているけど要所で溢れ出してしまっている状態。どちらも辛いんだけど、一人ぼっちで自分の苦しみに気付き向き合う余裕のないリリーがやっぱり観ていて辛かった…。

でも、そんなリリーにも声をかけ、手を差し伸べてくれる人がいたり、ムクドリとのバトルの中、少しずつ、自分ともジャックとも向き合って行けるようになる…。

ムクドリとのあれやこれやは、さすがコメディエンヌ!笑えるし、俳優としても実力があるので、コメディに寄りすぎないバランスがとても良かった👏 寛容さや優しさ、内に溜め込んでしまったり、爆発したり、人間味のあるリリーを演じたメリッサ・マッカーシーが本当に良かったです!等身大というか、自然でとても共感出来ました。

こんな辛い事が起こった時、同じ痛みを抱える二人だからこそ寄り添う事も出来るけど、ペースが違う二人だからこそ、お互いを責め、自分を責めて収拾がつかなくなってしまったりもするんだろうなと思ったり…。正解がないから、難しいけど、一人きりでは前を向くのは難しい事は確か。

人は脆くて、強い。自分の為に強くなれる人もいれば、誰かがいるからこそ強くなれる人もいる。辛いと言える人が弱い訳でもないし、辛いと言わない人が強い訳でもない。特に人の死の前では、強いも弱いもない。

でも、寄り添える相手がいるなら、自分とも相手とも向き合って、立ち止まって、少し戻っても、ゆっくり進めたら良いなと思う。

この上ないほど辛い喪失がテーマだったけど、たくさん泣きながらもそこから回復していくストーリーで、自然と心が温かくなる良作。精神的にも、物理的にも「共存」について考えさせられました。

重すぎないのに、心理描写が繊細なのも好感が持てたし、メッセージ性の強い音楽も良かったです!


2022-82
Yui

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