あまのうずめ

幻滅のあまのうずめのレビュー・感想・評価

幻滅(2021年製作の映画)
3.4
リュシアンは孤児で妹の嫁ぎ先の印刷所で働き、没貴族の母の旧姓ド・リュバンプレを名乗り詩を書いている。司教の推薦で土地の男爵夫人ルイーズのパーティーに呼ばれ詩を披露するも余り拍手を貰えなかった。男爵は狩猟書と犬の世話が趣味で年老いていたことも夫人は耐えられず、芸術家の後援者であろうとしている。男爵に隠れ不倫関係のリュシアンとルイーズは一緒にパリへ出ることにした。リュシアンはパリの出版社から自身の詩集を出したい野心がある。


▶︎ フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの「幻滅 メディア戦記」を映画化。貴族と労働者、パリと田舎、芸術とマスコミ、王党派と自由派の対比も面白く、そこに動く金を要とし、大志を持ちパリに出るも、金で世論捜査をする小新聞の記者に身を賭して行くリュシアンを中心に描いている。

あの監督グザヴィエ・ドランが小説家役ナタンとして出演して、且つ良い演技を見せていたのが大きく印象的だった。

王政復古したばかりの時代のパリにピッタリな人物配置で、人物相関図は皆腹に一物持つ人ばかりになる。メディアは何処の国でも誕生した時から同じなので驚かないが、ともあれ引いた目線で見るといつも革命を謳う割には弱っちいフランス国民気質がここにもあって少し笑えた。

ろうそくの灯りを模した照明、当時を彷彿とさせた美術、ヘアメイク、衣装、ローケーションも見事で見応えがあり、希望のある終わり方に救われた。