あまのうずめ

ロスト・キング 500年越しの運命のあまのうずめのレビュー・感想・評価

3.5
フィリッパ・ラングレーは新経営陣が敷いたスーパーチームの6人に選ばれず不満を抱える。フィリッパは筋痛性脳髄炎の持病を抱え、息子マックスとレイフを元夫と育てている。ある日マックスと“リチャードⅢ世”を観劇し、リチャードⅢ世は正当な評価を得られていないのではと疑問を抱いた。リチャードⅢ世の書籍を買い漁り、リチャードⅢ世協会の集まりに出掛けると彼には墓が無いと知ることになる。


▶︎ 御大スティーヴン・フリアーズ監督が実話に基づく物語を撮った作品。当時リチャードⅢ世の墓が発見されたとのニュースを覚えていて、その経緯を知れて良かった。

シェークスピアもリチャードⅢ世を残酷で愚王のせむし男と描いているが、戯曲の悪役に反論も出来ず敬意を表したくてもお墓もなかったことで、真っ向から、だけど頼りなさげに立ち向かっていく姿を見せてくれた。

一女性の大発見を横取りしたレスター大学のやり方は古今東西ありがちな憤慨レベルで、エンドクレジットの後日譚に安堵した。

幻視は脚色かも知れないが如何にも亡霊に高い価値を見出す英国らしい表現だったし、フィリッパの家族関係を加えたことで、大発見の裏にあった事象とリチャードⅢ世のそれと暗にリンクさせていたのも人間ドラマの層を深めていた。

リチャードⅢ世が簒奪者ではなかったと歴史を改めさせたことは、お墓を発見したこと以上に偉業だったと思う。『賢者は歴史に学ぶ』との故事を改めて噛み締めさせられた作品だった。