九月

パワー・オブ・ザ・ドッグの九月のレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.7
なかなか嫌な映画ながら、観たあとしばらく動けずずっと余韻に浸っている。
映画祭で盛り上がっているということ、ベネディクト・カンバーバッチが主演ということがきっかけで鑑賞に至り、他の情報やあらすじはほとんど頭に入れずに観た。
章分けされ淡々と進んでいく物語に、ちょっとでも気を抜いたら着いていけなくなりそうだけれど、全体に漂う重い緊迫感に引き込まれ、目が離せなかった。

主要人物全員の目線でこの物語を見て、それぞれに感情移入することができたが、誰ひとりとして好きにはなれなかった。
弟のジョージが妻ローズのことをひとりにしてどこかへ行ってしまうところとか、何度も描かれていたけど、地味ながらすごく嫌だった。
良くも悪くも、人は人と関わって少しずつ変わっていく部分があると改めて実感。でも変わらない者も…?

こうであってほしくないな、と思ったことが実際そうであったり、こうなってほしいな、という風にはならなかったり、途中まで何を見せられているのか?とさえ思ったけど、誘導されていたのか?でもあの結末は全く予想だにしなかった。
偶然なのか必然なのか。

最後まで観て、思えば…そういえば…ということが多すぎる。伏線は初めから張り巡らされていたのかと気付くのは最後になってから。二回目の方が楽しめそう。でもすぐに見返す気力はない。
映画館で観ていたらきっと家に帰れていないんじゃないかと思うくらいだったので家で観て良かったけれど、終わったあとぐっと部屋の気温が下がったような、寒くなるような映画だった。
九月

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