イトウモ

パワー・オブ・ザ・ドッグのイトウモのネタバレレビュー・内容・結末

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

宴会の席でフィル(ベネディクト・カンバーバッジ)が弄ぶ紙でできた小さな造花は、それをつくった少年(コディ・スミット=マクフィー)の存在しない性器である。

大学の夏休みで農場に帰ってきた少年を連れたフィルがうさぎを追い詰めるためにそれが逃げ込んだ丸太をどかそうとするとき手に切り傷をつくったところ、わざわざ映画が挿入する麦の穂のようなものがそよぐのに彼の手から飛び散ったらしき鮮血が滴るのを捕らえたショットは、ジャン・ルノワールなら少女が初潮を迎えたのを暗示するためにつかうようなレトリックである。つまり、この傷はフィルのの女性器なのだ。

少年は炭素症で息絶えた牛から採取した体液を、縄を編む共同作業のうちに彼の傷口に塗り込んで毒殺することに成功する時、フィルは彼が隠し続けた唯一の弱点であるその性向のために、「処女喪失」して命を落とすことになる。

カウボーイという男性ばかりが登場するジャンルが、女性の妄想によって二次創作された結果、神話とポルノの見分けがつかなくなった世界。文学的、と言って悪ければあまりにも明確に暗示された意味の過剰に息苦しくなった。