いち麦

土を喰らう十二ヵ月のいち麦のネタバレレビュー・内容・結末

土を喰らう十二ヵ月(2022年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

こういう自給自足の生活は一日中のほとんどを食材の調達、調理と片付けのためだけに費やしているんだなと実感。だからこそ、その対価として質素な料理がとても美味しそうに見える。特に通夜振る舞いで拵えられた精進料理に惹かれた。物語では九死に一生を得た体験から逆に恋人と一緒に暮らすのを思い止まるツトムの気持ちの変化が沁みた。沢田研二の均質でフラットな語りはなかなか味わいがあって良かった。

ただ、雪に閉ざされる長い厳寒期の描写は余りにも足りていない。橋本愛主演「リトル・フォレスト」の潔さに比べると、あれもこれもと欲張ったあまり、やっつけ仕事のような雑な撮影に感じた画も多々あった。沢田研二の雪上歩きや山歩きが都会人丸出しのままのぎこちなさ…里山暮らしが長ければ、たとえ歳がいってても山斜面を登る足取りは若者が追いつかぬほど軽快なガニ股歩きなはず。もっと練習を積んでから粘り強く良いテイクを狙うべき。松たか子は台詞といい笑いといい、まるで取って付けたような浮いたリアクションだったのも気に障った。人物像と設定を充分に咀嚼できてない印象を受けてしまう。挿入される小動物の愛嬌ある姿もそう。ペットショップで買ってきてそのまま小川に放って撮ったようなヒメダカや、ヤマバト(キジバト)の話をしながらも何処ぞで捕まえてきて放った人間慣れしたドバトを映すウソの“自然”映像。ダルマガエルやクサガメの画も持ち込み感が強い。これらの画には拘りが感じられずこれなら無いほうがまだマシだったとさえ思える。物語の展開や食事周りの映像が良かっただけに大変残念に思えてならない。
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