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ワース 命の値段のEyesworthのレビュー・感想・評価

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
4.6
【経済的損失と心的苦痛】

サラ・コランジェロ監督×マイケル・キートン主演の2001年9月11日に起きた同時多発テロの被害者と遺族への補償基金プログラムを束ねる弁護士チームが置かれた苦境を実話ベースで描く。

〈あらすじ〉
弁護士のファインバーグは、同時テロ発生から間もなく政府からあるプロジェクトへの協力を依頼される。それは、訴訟回避の目的で補償基金を設立した政府と約7000人の被害者のまとめ役だった。ファインバーグは、犠牲者遺族たちの話を聞き、難題の解決に奔走する…。

〈所感〉
「命に値段を付けた男がいた」これだけで嫌でも引き付けられるキャッチコピーである。
9.11の残された遺族の物語を描いた映画としてはスティーブン・ダルドリー監督の『ものすごくうるさくてありえないほど近い』が胸に響いたが、こちらは犠牲者の心的苦痛は置いといて国家にとっての経済的損失を計測し、遺族へ補償金を促そうと尽力した人達の物語ということで、全く逆の視点から考えさせられた。そもそも、こういった仕事をする人達がいることに全く思い至らなかった自分が未熟だと思った。世の中にはこのような命とお金を天秤にかけた無理難題の仕事が沢山あるはずだ。日々勉強である。マイケル・キートン演じる弁護士ケネス・ファインバーグは最初こそ、大事なのは正当性よりもスピーディに数字を追うこと、という心情を持つ四面四角なビジネスパーソンであったが、当事者である遺族と対話を繰り返していくうちに考え方も表情も柔軟になっていく様が素晴らしい。ただ、最初と最後で何が違うか?と聞かれるとファインバーグの態度の問題で、実情は何も変わっておらず、結局達成率という数字だけを追いかけている気がしてそこが引っかかった。教科書に載るべき素晴らしい題材だが、映画としての面白さには欠ける。仕事は綺麗事じゃ済まされないが、大切なのは当事者に寄り添う姿勢と傾聴力だと思った。
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