Sasada

わたし達はおとなのSasadaのレビュー・感想・評価

わたし達はおとな(2022年製作の映画)
4.3
とてもとてもリアルだ。“花束”のそれとは違う現実味。
この映画に出てくるキャラクターは「こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です」とは言わない。本当にどこにでもいる凡庸な男と女。男がある事実を伝えようとするときの、冗談にみせかけた応酬の緊迫感たるや。

その辺に転がってる男女だからこそ、“男らしさ”が根っこにある出会いと別れの物語として、質の高い映画だと思った。
(ちょっと思い出しただけ みたいにノスタルジーに浸られるとキモいんだけどそれがないのも好き。生々しくて良い)

「別にたのんでないよね?勝手に不機嫌になられても困るんだけど」
「(俺に〇〇と言われて)嬉しい?」
「子供じゃないんだからさ。コントロールしようよ。」
「分かるけど、その言い方はないんじゃない?」
体調悪い彼女を気遣うポーズをとりつつ朝食は作らせるオープニングから不穏ではあったけど、もはやホラーである。マンスプレイニングとトーンポリシング。

劇中にセリフとしては出てこないけど、“女は感情的、男は論理的”って本気で思ってんだろお前。
結論ありきで“正しい”自分の意見にねじ伏せようとする。他者の話など聞いていないしケアする気などない。

そんな彼の好きなところは好きだし、嫌いなところは嫌いなまんま。折り合えるうちは一緒にいて、無理だと思ったら別れる。彼のために作った朝ごはんを自分のために作り、取り乱さず涙もこぼさず今日が始まる。「わたし達はおとな」だから。

not heroine moviesという企画の1本だそうです。男を惑わすファムファタルではなく、こういう女性キャラクターが出てくる恋愛映画を待っていました。素晴らしかったです。

(ここから追記)
大学生4人の女性グループの関係性が「下品」だの「上辺だけ」だのという感想を見て驚いた。私からすると、好きも嫌いもある程度ありつつも適度な距離感を保った良い関係に見えたので。友達より彼氏を優先したっていいし、友達があんだけ見事にゲロってたら笑うし笑わなやってられんやろ普通。
てか性とか恋愛についての話を“下品”ってなんだよ。
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