テーマが気になって鑑賞。
ENBUゼミナール、EACHTIME。
もう、ここまで描いてくれて満足。
日本人なら誰の心にも確実に刺さる話だと思う。
孤独と、人生の話だったと思う。
自分も今年親元を離れて、マナ姉弟に重なる思いを感じた。年老いたら、我々はどう生きていけばいいのかっていう問題もそうなんだけど、厭世観も相まって、そもそもこんな世の中に生まれてどうするんだよ。っていう怒りみたいなものすら感じた。
パチンコ屋は、老人のためのコミュニティセンターになっていると聞くし、老人ホームに入るお年寄りは「早く死にたい」と介護スタッフに言うという。
それは描き手が社会に対して諦念的なのはもちろんあると思うけど、実際の社会だってそんなに変わらないと思う。
親は、老後、縁側で一日中ぼーっと過ごして欲しい、とか、趣味の旅行や家庭菜園に没頭していて欲しいっていう人は見るべき。
「そばかす」「あのこは貴族」みたいに、「親が子供に(遠回しに)人生を強制する」、そんな心遣いの作品が増えた気がするけど、これはその逆。子が無意識的に親に与えている感情ないし、子が親に対して感じている装飾なしの感情。そういうものが猛々しく描かれている。
親の、老人の性欲とか、生きる欲望とか、願いとか、そういうのを看過していたなぁと。
その昔「大学は出たけれど」というタイトルの何某かを聞いた気がするが、この時代はまさしく「定年は来たけれど」だと思う。
年はとった。さぁ何をする?でも金がない、スーパーの半額惣菜を買おう。お金なくなった、惣菜を盗もう。しかし犯罪は嫌だ。生活保護を受けよう。デイサービスに行こう。毎日同じことの連続だ。あー、なんのために生きているのか。
自分の住んでいるアパートにも、行きつけのスーパーのイートインスペースにも、日がな一日中、ずっとぼーっと外を眺めている老人がいるが、あの人たちの生活とはどんなものなのか、その心象風景を想像しただけで心が狂いそうだ。
私の小さい頃に父が、「年寄りはいいよな、毎日が日曜日で」と言っていたが、果たして「暇であることがいいこと」なのか?これは昨今流行っている「FIRE」についても言えることではないか。金だけ貯めて、社会的制約を受けない生活をすることで自由だと思っているが、最高の自由とは一種の孤立なのではないか?
というように老人のQOLについて、こちらの思考を揺らしに揺らしてくる。
ここまで書いてきたのはマジでQOLについてだけになってしまった。何故ならそれだけ考えさせられる部分が溜まっていたから。身の回りに。
では別のテーマとして今作で扱われているのは売春である。マジで若葉ちゃんのデビュー戦はがんばれ〜って思いながら観てて、マナとの擬似家族的な愛に涙流しそうになってたら、あのラストよ、容赦ねぇ〜!
老人ホームでおっぱじめたのはマジで焦ったけど、あそこでは結局バレなかったんだなぁ。
マジで警察にバレて、最悪の胸糞エンドではあるけど、それぞれにある程度の希望があった。マナは母に家族として認められて、カフェオレボーイはパン屋を始めることになって、妊娠ガール(しゃがれた声がすごく良かった!)は、ありったけの現金を盗んでいく。
ユーロスペースが埋まるだけのことはある。
内容の倫理的正しさはともかく、ヒューマンドラマ、問題啓発として、とてつもなく心を打ってきたのでこの評価。
こちらも名言のオンパレードだったのでまた観たい!