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猫は逃げたのotomisanのレビュー・感想・評価

猫は逃げた(2021年製作の映画)
3.9
 猫もそっぽ向く離婚騒動。「カン太」の親権が最後のもめごとなんだが、そうとは知らぬはずのカン太は書き立てほやほやの離婚届に用足ししてしまう。
 カン太が猫と知れると幾分肩透かしだが、こんな芸当、猫にしかできまい。それに案外そいつを接点にして関係修復の糸口が模索され始めるのかもしれないだろう。そうなると黙ってられないのは不倫相手だ。文芸作家志望だがスキャンダル誌のライター止まりな夫の相手、敏腕パパラッチが暗躍して、妻、躍進の兆しあり、冴えない亭主を尻目に自信をつけ始めた新進漫画家であるが、彼女の対抗不倫の相手で茶名人な編集者を手練の盗撮で脅かして別れ切れない二人の背中を押してやろうという。
 それで猫の雲隠れとなるのだが、ことがバレて四角関係者が勝手を喋り始めるとたちまち不倫関係の危なっかしさ、離婚の動機のあやふやさ、それどころか結婚自体が息子「カン太」の出来ちゃった婚ではないのかと思えてくる。
 大人たちの新関係が急速に色褪せる中、息子「カン太」と隣家のミミは急接近、4つ子の父となるのも知らずに「カン太」はじきに死んでしまうが、カン太のションベン漬けの離婚届はうやむや、不倫相手のふたりも何故かの連立状態移行で不倫もうやむや、職掌上も4人は離れられずなあなあ。ついに「カン太」の忘れ形見を一匹づつ引き取るという。
 「カン太」でくっ付いてつながった4人が今後2×2なのか1×4なのか知れないが、さしあたり、(1+猫)×4ではあるらしい。猫2価で男女結合が強化されるかは知れないが、早世の「カン太」的には俺のガキどもをよろしくな、というところだろう。作家志願は文芸部に異動、漫画家はネコ漫画でブレーク、パパラッチはフリーで斬り捲りの日々、編集者はそんなパパラッチを茶養生で同居中というわけで、猫の恩返しの方がご苦労な結末には笑ってしまう。しかし、なかなかどうも、人間こんなもんかも知れんという、普通の後味でない。
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