ニャーすけ

ブルーズド 打ちのめされてものニャーすけのレビュー・感想・評価

4.1
栄光を失った過去のMMAスター選手が、息子との生活のため、千載一遇の復帰戦にすべてを賭ける……。
あらすじだけ聞くと、古今東西の格闘技映画のクリシェそのものだが、それらの作品の中でも本作は傑出している。

例えば『ロッキー』では、試合が近づくにつれロッキーが周囲の人々との絆を深め、彼らの想いを背に試合当日を迎えるが、本作ではそう都合よくいかないリアルな人間関係が辛い。
心身ともに傷ついた不安定な主人公が、それでもたった一人ケージに上がり、運命に抗うように必死で強敵に喰らいついていく姿には魂が震えた。
そんな主人公の怒りと脆さを繊細に体現したハル・ベリーの芝居はキャリアでも屈指のもので、その年のアカデミー主演女優賞は彼女にこそ相応しかったのでは……と思わずにはいられない。

また、主人公のファイトスタイルがグラップラーのため、寝技の攻防が試合シーン最大の見せ場となるのが格闘技映画では珍しく、それも本作特有の大きな魅力だった。
ロッキーが冷凍肉をサンドバッグ代わりにぶん殴るのと同じノリで、ダミー人形相手に延々黙々とグラウンドポジション転換を練習するハル・ベリーがとてもかっこいい。
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