ダイヤモンド

マイスモールランドのダイヤモンドのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
3.0
マイスモールランド_。

世界なんて、小さくていい。父がいて、妹がいて、弟がいる。ソウタ君がいる。それだけで幸せ。
でもクルド人であるけど普通の女子高生として毎日を送るサーリャにとって、世界は驚くほど大きい。複雑で、意味不明なことばかり。それが次々押し寄せてくる。背負い切れるはずがないのに。

難民申請が許可されないクルド人の家族を、長女サーリャの視点から追ってゆくドラマ。社会的テーマを盛り込んでいるが、いち女子高生のありふれた日常とその重いテーマが時に絡み合って展開される。そのためか、不条理感が否応にも増して、いたたまれない気分にさせる。

世界的に急増しているだけでなく、受け入れる方もパンク寸前の難民問題。
それは日本も決して対岸の火事などではない。でも私たちはそれを知らないだけ。
身近に感じられないため、日本の難民対策がどうなっているのかまったくわからない。

ものすごく悲しいし、怒りすら感じる。至って普通の高校生だけど、背負っているものが重すぎる。その重荷になんとか耐えられるのも、家族愛であり、日本での平和な普通の暮らし。でもそれが失われようとしている。何も悪いことはしていないのに。祖国を失い、故郷を追われ、生命の危機とは無縁の日本の地で、新しく生きていこうとしているだけなのに。
あの家族の周囲の人たちの気持ちもよくわかる。ソウタやコンビニの店長、弁護士…。みんな申し訳ない気持ちでいっぱい。こんなことしかできない。無力感。

これはやはり個人レベルではなく、本来は政治・行政が真剣に取り組むべき問題。
それでも喫緊の問題として、目の前にあの家族のような難民が現れたらどうしよう。
やはりあの周りの人たちのように、できる限りのことをしたい。いや、それしかできなくて申し訳ないという無力感に襲われるでしょう。

結局は解決の糸口さえ見出せない。それはどの国でも同様なのでしょう。難民を発生させる国の問題でもあり、流れてくる彼らを受け止める国の問題でもあり。

ただ無知であることは良くないこと。そして無視することも。できることしかできない、その無力感を大切にしたいです。