かすとり体力

マイスモールランドのかすとり体力のレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
3.8
最近特に社会的な注目を集めているクルド人問題をメインテーマに据えたドラマ作品。

本作、一本の映画作品として観たときには欠点のないの作品とは言い難いんだけれど、やはりクルド人の問題を物語の中に落とし込み「クルド人問題(果ては難民問題)って、具体的にどういう問題?」っていうところを地に足がついた形で可視化してくれている、その社会的意義は相当にデカいと思う。

だってさ、この作品で描かれている難民に関する日本の制度、誰がどう考えてもおかしくない?

そりゃさ、私もそれなりに実務サイドに責任を持っている社会人として、組織においては綺麗ごとだけじゃ成立しないことがあるってなことは重々承知。

そして我々大人が解く方程式は、誰かが悪者・誰かが正義であり、どうやったらその悪性を減らしていけるのか、みたいな単純な一次方程式ではなく、本当の悪者なんていないより根深い世界であるからこその高次方程式ってことも肌で理解している。

つまり、難民に関する制度が現状の制度に落ち着いているのには何らかの理由があるんでしょうということ。

ただね、ただ。
明らかに、社会通念上の人権・倫理観と反している制度であるのであれば、それをなんとかして、少なくともそうではない方向に是正していこうとするのも、これまた我々大人の責任でしょう。

とは言え、何かすぐに手が打てるわけではない。

そんな中とりま出来ることって、やっぱ、こういう問題を「知る」ことであり、そしてそれについて誰かと「話す」ことだと思うんだよな。
(あとは当たり前だけど選挙行くこと)

そう言った意味で、クルド人に関する断片的な情報や極端なヘイトがX上に蔓延している今こそ、非常に意義深い作品だと感じた。

最後に、主人公を演じた嵐莉菜氏、演技が本当に素晴らしすぎんか。。

難民側と日本人側で揺れ動く繊細な感情であるとか、善意に紐づくアンコンシャスバイアスをぶつけられた際の微妙な心の揺れとか、
完璧に表現していたと思う。素晴らしい。
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