クルド系難民を主人公にしたファティ・アキン監督の「RHEINGOLD ラインゴールド」を観た際、幾度も頭を過ったのが本作だった。いわゆる「是枝組」（川和田恵真監督は「分福」に在籍）らしさを感じずいられない、本国における移民社会の丁寧かつ実直な描写。本作では三つの言語が交錯するが、此処は紛れもなく日本だ。主人公家族が結果的に強いられる制限は実に具体的で、特に、物語の主題（タイトル）ともとれる“行動範囲の制限”においては、始終ひりひりと観客の胸を灼く。「佐々木、イン、マイマイン」、「ドライブ・マイ・カー」に続いて、撮影監督は四宮秀俊。ハンディと固定を見事に使い分けた文句なしの映像。本作の後、氏のカメラは「窓辺にて」においてもその技能を余す所なく発揮している。勿論、映画初出演とは決して思えぬ嵐莉菜の演技も素晴らしい。また、最低のパパ活男を演じた池田良渾身の演技にも大きな拍手を。
