埼玉県に住むクルド人一家の難民申請が不認定となり、生活が一変する様子を描いた作品。と同時に、先進国の中でも難民の受け入れに極めて消極的な日本の現状を描いた作品でもある。
「名前を出せないクルド人難民に対する取材を基に製作しました」とのテロップ。実際に埼玉で取り沙汰されているクルド人難民受け入れに関する諸問題を克明に描きながらも、映画ならではの視点とドラマ性を持ち込んでいる。理解が難しい側面もある題材ではあるが、この手法によって誰でも把握できる内容になっている。監督は本作がデビュー作となる若手の川和田恵真だが、製作には是枝裕和も携わっているようで、確かに手法的にも彼の作風に通じる部分がある。
主人公の女子高生を演じるのは5カ国のマルチルーツを持ち、モデルとして活躍してきた嵐莉菜。幼い頃から日本で育った設定で勉強熱心。日本人の友達とも上手く付き合う現代っ子として描かれるのだが、その自然な演技が実に素晴らしい。更に驚くのは、その家族を演じる3人が、嵐莉菜の実際の家族である点だ。家族それぞれ日本に対する感情に違いあり、更には他のクルド人難民や、周囲の友人とのやり取りから、難民問題の複雑な構造を描き出していく。
是枝監督作品に通じる淡々とした構成から、後半は何気ない会話シーンで強く響く展開が何度も訪れる。静かだが心に残る作品である。