おもち

オッペンハイマーのおもちのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【プロメテウスは神から火を盗み人々に与えた
その罪によりプロメテウスは囚われ
永遠に拷問されることになった】

観るまでどんな内容か分からず、原爆の父の英雄譚だったらどうしよう…と、とても恐ろしかった
観た後の今はもっと恐ろしい気持ち
人類では制御できない武力を、人類が創り出してしまったことが怖くて怖くてたまらなくなる
戦闘機に乗った私のすぐ真横を、核弾頭を積んだロケットが横切っていく
それが落とされれば、そこにいた人達は焼き消されて死ぬか、火傷を負って死ぬか、数日から数週間もしくは数年経って死ぬか、その子供達にも影響があることを私たちはもう知っているから

オッペンハイマーは原爆を製造する前から、それが世界を壊すと分かっていた
アインシュタインと湖畔のほとりで会い「何十年か後に君が罪を償い終えたと、人々が思った時、君も称されるだろう。でも覚えておくべきだ、それは君の為ではなく、自分の為にやっていることだと」と未来の不穏な予言をされる
その予言が雨に打たれた湖畔の波紋のように広がっていく。雨粒の流れ、光の輪、水に広がる波紋、自然の描く美しさは神の領域で、その根源的なパワーから、オッペンハイマーは原爆を創り出した

自らの作ったもので、何十万もの人が死ぬ。数えきれない命の犠牲をその肩に背負うこと、そのあまりの恐ろしさに震えて、目を瞑りたくなった
オッペンハイマーが目を開いて始まった映画は、彼が目を瞑り暗転して終わった

あ!!あと!!大統領!!
ハンカチを差し出して笑った大統領!
「あの泣き虫を二度と連れてくるな」って言ったな。弱い奴には政治はできねぇってか。そうなんだろうねきっと。
だけど、そうだとしても、
オッペンハイマーが大統領に向かって「この手が血濡れてしまった気がします」と言ったことが唯一の救いだったんだぞ。被爆国日本で生まれ育った私達にとっての、ほんの僅かな、砂粒ほど細やかな、唯一の救いだったんだよ本当に
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