たかちゃん

オッペンハイマーのたかちゃんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
原爆開発者が、核管理強化、水爆開発反対を主張したため、ソ連のスパイだの共産主義だの中傷にさらされ、共和党マッカーシズムの公聴会で証言を強いられ、結果、研究所から排除される。国家に貢献し、利用され、果ては追放され、居場所を失った天才科学者。
ユダヤ人のオッペンハイマーは、ナチ・ドイツより早く原爆を完成し、抑止力としたかった。だが、戦争の早期終結のため、広島、長崎に原爆を使用。「大統領、私の手は血で汚れています」。「原爆を落としたのは私だ、私が命令したのだ」と大統領。側近に「あんな泣き虫、連れてくるな!」アインシュタインに話すと、「そんな祖国、捨てちまえ。私はとっくに捨てているよ」。その助言に従っていれば、名誉も栄光も受けずとも、傷つくことはなかっただろう。だが、周りがそれを許してくれただろうか。ある意味、国家というブラックホールに吞み込まれた個人(の主張)という不条理で恐ろしい物語といえよう。
ノーランらしくない題材のようだが、プロデューサー、脚本も手掛けており、彼が本当に作りたかった作品なのだろう。
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