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オッペンハイマーのaikidoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.5
テネットは難解な映画で、一度の鑑賞で全てを理解するのが難しい作品でしたが、今回の映画では、カラーと白黒で過去と現在を表現し、時間軸を交錯させた演出によりオッペンハイマーの伝記映画として分かり易く描写されており、前作よりも観易い映画だなと感じました。
また、3時間という長い上映時間でも集中力を持続させる巧みな編集と効果的な音楽で、物語に没入させるノーランの手腕は流石だなと圧倒されました。
ただ、裸のシーンは必要なかったんじゃないかと感じたり、編集は上手いけれどもやはり長く、退屈に感じられる部分もあるので、厳しめの評価になりました。

科学者としては優秀であるけれど、女好きで、思ったことを何でも口にしてしまうオッペンハイマーは人としては、問題が多く、欠点を抱えた人物であるといった描写は、彼を肯定も否定もしない伝記映画として中立な立場に徹しており、彼の栄光と挫折や苦悩を描いた人物描写にフォーカスしたノーランの判断は正しいなと感じましたし、観客に彼の半生を追体験させるような構成も見事だと思いました。

原爆の被害を表したシーンは描かれないですが、オッペンハイマーを英雄には描写していなかったり、科学が進化することで兵器の製造をやめず破壊へと進む世界への警鐘も促していると感じたので、一人の人物の伝記映画として、そういったシーンがなくても違和感は感じませんでした。

万人にオススメ出来る映画ではないですが、豪華キャストの競演やノーランが好きならば響く部分はあると思うので、観て損はない映画かなと感じました。
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