観やすいしメチャオモロいやん。
結果的にアカデミー賞受賞作として公開されましたが、何故これがなかなか日本公開されなかったのかは問題があります。
原爆の父であるオッペンハイマーを英雄視したり「プロジェクトX」的なアメリカ万歳的な映画だからかな?と思っていたら全然ちがうやん。
最初の方は国の為に頑張ったのに悲惨な末路へ向かう学者という事で「イミテーションゲーム」のベネディクト・カンバーバッチっぽいなと思って観ていましたが、最終的に何もわかっていない小心者のクソ野郎の右往左往を楽しむ「キラーズ・オブ・フラワームーン」のディカプリオを観ている気分になりました。
劇中のイメージでクソ野郎二大巨頭と言えばロバート・ダウニー・Jr演じるストローズとジェイソン・クラーク演じる聴聞会の弁護士だと思います。
でもコイツらが揚げ足取り的に指摘している事って割と事実ですよね。
なんで突然道義的責任に目覚めるねん?とか原爆はよくて水爆はダメってどういう事やねん。
キリアン・マーフィーの繊細で泣きそうな感じに騙されそうになりますが、今作はオッピーのナチュラルボーンクズな感じを楽しむ映画でした。
天才的な人に多い傾向の性質ですが思った事全部言うオッピーが酷い。
「物理学者を目指さなかったの?」
「いや〜、勧められたけど靴売りを選びましたよ。」
「卑しい靴売りかー。」
「卑しくはない!」
の時のロバート・ダウニー・Jrの瞬間的マジ顔の演技が最高でした。
一事が万事この調子な上に、浮気相手の死の悲しさを妻に告白して「俺こんなに可哀想やねん」感を出したり他責思考と言いますか自分のやった事へ全く向かい合おうとしません。
本当にロバート・ダウニー・Jrが吐き捨てた通り自己憐憫の冠を被った自分に酔っているんです。
そりゃトルーマンもキレるわ。
原爆を主題にしているのに間接的な表現で広島や長崎のアーカイブ映像を使わない事で批判があったようですがコレは使わなくて正解だと思います。
劇中でオッペンハイマーはニュース映像から目を背けますし、実際のオッペンハイマーも日本には来たけれど広島と長崎には行かなかったそうなので、少なくても劇中ではコイツは見てないし、向き合ってないんです。
ラストはオッペンハイマーとアインシュタインが何を話したかというシーンで良い感じにオッピーが世界を憂いて終わります。
が、映画序盤であの話の後アインシュタインはめっちゃ怒っていました。
そりゃそうでしょ何が「私達は〜」だよ。
テメーがやったんだろが人のせいにするなよ、と最後の最後まで何もわかっていない何にも向き合っていないオッピーが最低で最高でした。
役者陣が超豪華で登場人物が多いので人物表を見てから鑑賞した方がいいかもしれません。