アランスミシー

オッペンハイマーのアランスミシーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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ダンケルクで獲得したノーランの進化↓
徹底的に作家自身の思想を排除して、オッペンハイマーただ1人の目に写った事象を片っ端から網羅的に描く事で、中道を貫く姿勢を演出手法それ自体によって自ら体現するノーランがお手本すぎて脱帽した。
それは劇中にあった「お前は科学者だろ、科学者らしく生きろ」という台詞に直結する。
つまり主観を一切排した客観的かつ理性的目線という事。
これは理系分野に世界で最も精通した監督であるノーランだからこそ成し得た業であろう

この作品を見ておきながら、「原爆の被害の詳細をここで描かなかったのはなぜか」とか質問してた日本のマスコミが本当にバカバカしくて恥ずかしい。
どんな形であれその被害を写そうとすれば、どの地区のどの被害者のどの写真or証言を使うかというバイアスがそこには生まれる。
それをして少しでも何かしらの思想に偏る事こそがこの映画における悪として描かれてるにも関わらず、まさにラストでアインシュタインが言っていた「君の名前(オッペンハイマーが生んだ発明)は結局は他人の私欲や思想実現ために使われるのだよ」という助言を真っ向から裏切る行動を取って”ノーランの発明”を利用しようとする日本のメディア、君たちの事を言ってるんだよ。
マルコムXに賛同して暴力的改革を許容するスパイクリーのような人間が日本のマスコミと同じ側に立って批判してるのも納得

絶対的に自分が愛国的な偏った思想を捨てられたと確信を持って初めてこの原爆問題に関して議論するべき。そうでなければ結局それは再びナショナリズムという全体主義思想を掲げたプロパガンダによる被害を生むことにしか繋がらないのだから。
徹底的グローバリストのみが語る事を許される主題。

中道って言う選択肢がある事をなぜすぐに忘れちゃうんだろ。
でも分かるよ、一匹狼を貫いてでも公正な立場で居続けるのは辛いし、拠り所がないと自分が何者であるか分からなくなっちゃうよね…俺も昔はそうだったから。


アインシュタイン「僕と同じく国が君を裏切るのであれば君も国を去るべきだ」=結局の所愛国心はその国のトップに利用される未来が確定している訳で、グローバリストになる以外道はないという意味

さぁ皆んなは偏愛や執着や私欲や名誉への渇望や更には愛国心すらも一切捨てて、本当の世界平和(偏りなき人類愛)の為に自分を律する覚悟はできてるか?
それができないのであれば大前提としてまず平和主義者を語るべきではないという現実を肝に銘じておこう