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オッペンハイマーのtwitwilightsのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
T.S.エリオットの“荒地”と、ストラヴィンスキーの“春の祭典”。この優れた二つのプロップスは、原作からの採用なのだろうか?

“荒地”とは、「死の国」を意味し、第1次大戦後の荒廃したヨーロッパがその主題とも言われる。そして、ストラヴィンスキーがロシアのある儀式にインスパイアされ書かれたとされる“春の祭典”。そんな春の到来を祝う祭典では、“生贄”とされた少女が死ぬまで踊り続けるのだという。個人的には、この二つのキーワードにスタックされた3時間でもあった。

とはいえ、やはり絵作りは流石のノーラン。モノクローム・パート(史上初IMAXモノクロ・アナログ撮影!)の美しい発色には「カモンカモン」を思い出した。また、ロス・アラモスのロケーションが災いしてか、"ドント・ウォーリー・ダーリン"も、"アステロイド・シティ"も、果ては"ブレイキングバッド"でさえも、本作の前哨戦として回顧してしまう。

群衆による、あの狂ったようなストンプ。その凄まじい音響。ここは鳴る(聞こえる)、ここは鳴らない(聞こえない)という音演出。出音と到達距離。ノーランの真意は分からぬが、音響ギミックの限界を探った、大いなる"実験"作だったのではないかとすら思えてくる。

最後に、日本人としてナショナリズムを刺激されたかというと、個人的にはゼロに等しかった。
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