シェパード大槻

オッペンハイマーのシェパード大槻のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
-
強力な爆弾が作られたある時から自分自身を破壊する力を得た星、というノーラン監督のSFにも引けをとらないやばい設定こと現実。
堅く冷たいからこそ楽しませる映画の所以はその緻密さやインテリもさることながら、或る核に貫かれた清潔さによると思う。科学者の操作性を描きつつ肯定も批判もしない態度は哀れなるものたちと共に考えて今流と言えるかもしれない。本作のヒットは戦争やAIという未知のツールの出現などの情勢と絡んでいるとも取れる。科学者のロマンに突き動かされる青年期と、軍人と共に国家事業を進める中年期とでは主人公のキャラクターから映画の雰囲気まで少し違う。原爆を開発してからの場面特に壇上のシーンの圧迫感の表現がすごかった。現実世界から浮いたような、池のほとりのアインシュタインとのシーンが御守りみたい。会議室のシーンが長いと感じたけどオッペンハイマー事件はアメリカでは有名なのかもしれない。史実なんだろうけど、おじさんの恨みで主人公が立場を奪われるのはちょっと弱いし、国家事業ができない立場をすごく悔しがる主人公にもあまり納得できないと思った。登場人物の顔と名前覚えづらいけど主人公の俳優かっこいい。