シェパード大槻

哀れなるものたちのシェパード大槻のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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子供にとっての世界と混沌が描かれていてよかった。変な大人ばかりでロールモデルなんかない中で何が本当かを探していく旅は、きっとその子の個性に貫かれている!(ベラの場合は前向きな姿勢となんでも挑戦してみる行動力)ベラは子供だから流行や常識を内面化しないまま爆進していてイイ。本作自体も同様に、マッドサイエンティストへの批判や命を重く捉える風潮に乗っかっていなくてよかった。ビジュアルも内容も総じて飛び出す絵本みたいだと思った。画角の外側が歪んでいくカメラが不思議だった。衣装は可愛かったけど、博士はベラに豪勢な服を着せなさそうだし、たとえば最後に衣装を脱ぎ捨ててフェミニズムに繋げるとかでもないし、衣装の必然性があまりないと思った。別に可愛いからいいけど。あと女性の衣装だけ個性的で男性の衣装は普通なのに違和感を覚えた。衣装以外にも「布」がモチーフになっているとなんとなく感じた。
ベラは世界を見て賢くなって医者になるが、印象としてはベラが個人的にうまくいった感じがあり「世界をサバイブするにはイチ抜けするしかない」というメッセージが透けてくる。それは構造的解決にはらない。元夫の屍を越えるのは本当に正しいか。抜本的解決ができないところが、poor things なのかな?

科学の操作性を描きつつそれを批判も称賛もしないのが、オッペンハイマーと共通だった。あとモノクロの使い方。