オッペンハイマーの宇毘友鵶のネタバレレビュー・内容・結末

　２つの観点からノーランぽくない映画だった。

　ひとつ目は、この時代にしか作らない・作れない映画だということ。彼の映画って基本的にはタイムレスなんだけど、オッペンハイマーはとても現代的だった。
　もうひとつは、人間への信頼が完全に消え去ってたこと。ダンケルクですら人類への信頼感を喪ってなかったのに、今回はもはや絶望すらしてるように見えた。

　この２つの変化は、ありのままの今のアメリカを感じるのに十分すぎた。特に原爆投下後のオッペンハイマーによる演説シーンのグロテスクさには絶句した。人間の嫌な部分をこれでもかと見せつけられた感じ。

　反戦・反核映画というよりは、人間の醜悪な部分全てへのプロテストだと思う。俺にはオッペンハイマーが核に対して批判的になったきっかけになったのはいつか？と聞かれたときのあの回答はノーラン自身の言葉に思えてならない。即ち、あなたはいつ人間に絶望したのか？と。

　今作はかなり作家性が強火だから評価は分かれるだろうな。内容的には4.2ぐらいなんだけど、個人的にノーラン映画にはネアカ内容でいて欲しかった。あんな悪夢みたいな終わり方、希望が無さすぎる。WeではなくIで罪を認識しない限り、最後の光景が本当に立ち現れる日も近そう。