概要だけをみると、何となく小さな田舎でのひと騒動的のんびりした話なのかと思ったのだが、なかなかどうして身につまされる部分も多く辛い話だった。
良い奴だが単調な毎日を過ごし、これといって面白味のないおじさん。文化人ぶってはいるが、所詮は井の中の蛙なおじさん。二人のいざこざは実に見苦しく、パードリックの鬱陶しさとコルムの傲慢さが浮き彫りになっていく様と並行して、島内のちょっとした悪意も顔を覗かせる。そのいずれもが、ともすれば自分も他人事ではないのでは……と思えてしまうのが何とも居心地悪い。
ことあるごとに描写される対岸での戦争だが、それに興味がないと漏らすパードリックや、向こうでの戦争が終わっても島での小さな戦争は尚続いていく等、絶妙に皮肉が効いていて良かった。
皮肉といえば、善良であることだけが取り柄のパードリックの悪意が描写されるシーンや、善良なことには意味がないと吐き捨てるコルムの中にある善意が描かれるシーン等、お互いに否定しあっている部分をお互いが確かに持っているという辺りに作品のテーマが詰まっているのではないかと思った。