とぅん

やがて海へと届くのとぅんのネタバレレビュー・内容・結末

やがて海へと届く(2022年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

中川監督にとってはかなりの挑戦作だったのではないだろうか。
観終わった後にそんなことを考えた本作。

震災で親友のすみれを失った真奈の葛藤を通して、もう一度前を向いていくまでを描く•••となると、近しい人を失った主人公をこれまで「走れ、絶望に追いつかれない速さで」や「四月の永い夢」で題材としてきた監督のフィールドだなと思うのだけど、
今作は震災というデリケートなトピックを扱っていて、これまで真奈の物語として観ていた中で、中盤に出てくるリアルな人々の声が強すぎて、あまり上手く混ざり合っていない気がした。

それと、これまでの作品と決定的に違うのは、すみれ側の視点も描いたことだと思う。
親しいと思っていたあの人のことを自分は深く知っていたのだろうか、みたいな葛藤だけでは同じになってしまうので、今作は主人公視点だけじゃないことで、広がりは出たと感じた。

原作があるものの映像化というのもチャレンジだったのかな。
色んなところに目配せした結果、中川監督の成分が薄くなったような気がしてしまい、ちょっと残念だった。

しかし、岸井ゆきのと浜辺美波の組み合わせは良かったと思うし、主人公の胸をざわつかせる役割だった光石研はここでも好演していた。
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