こなつ

燃えあがる女性記者たちのこなつのレビュー・感想・評価

燃えあがる女性記者たち(2021年製作の映画)
4.2
各国の映画祭を席巻した話題のドキュメンタリー。上映館が少ない中で何とか観たいと思っていた。ジャーナリズムの原点を見つめるという意味でも素晴らしい作品だった。

インド北部のウッタル・プラデーシュ州。女性差別が根強く残るインドで被差別カーストの女性達が立ち上げた新聞社「カバル・ラハリア」。カースト制度にも入らない最底辺ダリト(不可触民)で、社会からも家庭内からも差別的な扱いを受ける女性達が運営する独立系メディア。その地域に根差した独自の取材で活動を続ける女性記者達の姿をカメラが追っている。

今まで映画作品の中で、インドの階級社会や女性差別について学んだことも多かったが、インド憲法が差別の禁止をしているにも関わらず、習慣的に残っているカースト制度。最底辺のダリト(不可触民)とは、カーストにも数えられない、他の身分の人が近付いてはならない存在なのだ。「人は皆平等」そう教えられてきた私達が想像も出来ないほどの現実がそこにはあった。

マフィアに牛耳られている採石場、警察もグルになっている。暴力で苦しめられても家族が殺されても、被害者達は怖くて声も上げられない。そんな人々に粘り強く接し、声を汲み取っていく女性記者達。彼女たちは偏見や暴力に怯むことなく、独自のニュースをスマホを駆使して伝え続ける。決して恐れないし、忖度しないその姿勢が胸を打つ。紙媒体からweb媒体に切り替えるのも簡単ではなかったろう。それでも一人でも多くの人にニュースを伝えるため、奮闘する姿は頼もしい。

世界中で注目され、高く評価された作品だけあって、本当に見応えのあるドキュメンタリーだった。
こなつ

こなつ